渋谷に全く新しいタイプ"夜の図書館"が誕生!!【森の図書室@道玄坂】 - NAVER まとめ
イチャラブするカップルを横目に渋谷の道玄坂を登っていく。
一見するとお店の入り口だとわからない。
私は大学では演劇サークルに属していて、外部の劇団のオーディションに出ることもあった。結果は散々たるものばかりで、せっかく友人の演出家につけてもらった芸名も使われることはなかったが、今思うとかけがえのない異世界探検をしていた。
ドアは会議室のように何の装飾もなく、中から警戒なジャズ音楽が流れている。一見さんお断り、という雰囲気を作りたかったのだとすればこれほど効果的に作られた入り口はないだろうと思われた。
ドアは締め切られている。その点で売れない芸術家の個展以上に入りづらい空気感があった。
その為私は一度ドアの前まで来ながら、むざむざ引き下がったことが一度あった。
今回はそのリベンジである。
A4用紙にこうあった。
「御用の方はインターホンを押してください」
実はこのドアは内側から開かないと開かないような仕組みになっている。
厳密にいうと開くのだが、開けても棚のようなものが侵入者を阻む仕組みとなっている。二重底のような二重扉の構造だ。
なぜこのような仕組みにしたのかは非常に理解に苦しむところなのだけれども、店主の意向とあれば従うほかない。
インターホンを押したのは一度ドアを開けて、閉めて、また開けてと繰り返した末のことだった。
「ドアを開けてお待ちください」
ガガガっとまるで無線機のような音が鳴った後に、若い男の声が言った。
ドアを開けて、といわれたが開けたまま中から開けてもらうのを待つ光景はあまりにもシュールであると思い、開けなかった。
その無駄なプライドのせいで中の店員さんがドアを開けてもこちらが開けておらず、こちらが開けるとそれを察知して店員さんが中から開け、だが私が少し気恥ずかしくて閉じるというさらにシュールなやり取りが行われてしまった。
店員さんに陳謝である。
店員さんと目が合って、店内に招き入れられると一言、「初めてなんですけど…」という初々しい言葉が出てしまった。こんなことだからモテないのだ。
もっと落ち着き払っていればよかったのだが、如何せん最初のやり取りが無様すぎて「この店に入るの初めてだったので手間取ってしまったのであって、断じて自分の能力不足で先ほどの不毛なやりとりを起こしてしまったのではない」という主張をせざるを得なかった自分のちんけなプライドがあった。
また室内はどこか大学のサークルを思わせるところがあり、大学一年生の自分をなぞったということもあるだろう。
どこかいち早く席に座って拠点を作りたかったが、店内の様子を観察に精一杯な私であった。
そんな私の様子を見かねたのか、
「せっかくですからカウンターにどうぞ」
と案内されてカウンターへ赴いた。
着座する。椅子は奇妙な形をしていて、大量生産式のかふぇでは見かけることのないものだった。荷物をかけると軋んだのに少々肝を冷やしたが。
メニューを見ると電気ブランがあったので早速注文。『人間失格』の中で紹介されたのが文学的には有名。
店内は軽快な曲がかかっていて、集中するにはいい環境だった。
入り口から入ってすぐ右にはソファ席もあり、女の子を連れ込むよいのではないだろうか(実際いい感じの雰囲気の男女がいた)。
一人で行くのなら酒を傾けながら名作を読破。
みんなで行くならプライベートの計画をワイワイ話し合う。
そんな光景が似合う場所だった。もっと意識高い系男女が集う場所かとも思ったが、期待したが、いなかった。
FREE WiFiも完備していたが、それを活用してそうな御仁はMBAを携えたおじさん一人だったか。昼間行けばまた違う光景が見れるのかもしれない。
せっかく森の図書室に来たのだから何か本を、と思い右側にあった大きな本棚の中から一冊の本を見つけ出した。
言わずと知れたSF小説の名作。
何度も10ページくらいで挫折した。今回も読み進めようとしましたが、ダメだった。
瞑想するようにして今度読みたい。
次に手に取ったのが、
こちらも萩尾望都さんの名作。
少し前に話した大学の同期と話が出て、「名前は聞いたことがあるけれども読んだことはない作品」として覚えていた。漫画ということもあり、結構早めに読み終わった。
ただ読み終えた印象が「フロル可愛い」という印象だったのがいただけないところである。
ところでこちらは自分で手に取ったものではなく、カウンターの隅っこに無造作に置かれていたものだった。店員さんが戻し忘れたのか、それとも意図して残しておいたのかはわかりませんが、意図して残しておいたとしたら非常にロマンチックである。
いいじゃないか、誰かが読み終えたとわかる本を手に取る瞬間というのは。
そういうストーリー性がある本との出会いは大好きだ!
この本を読み終えて、さて漫画ばかり読んでいてはいけないな、と思って本棚をあさって見つけたのがこの本。
Livedoorに対するメディア圧力について述べた本(ざっくり)。
途中までは「おおホリエモンって結構いい人なのかもしれない」と新鮮な思いで読んでいたのだけれど、ふと気になって出版社を見たところそこには。
ライブドアパブリッシング
の文字が。少しだけ残念な気分に。違う出版社で出せばよかったのにという思考が酔いと共に頭を巡った。
という感じで乱読しているときに、店員さんから声掛けがあった。
「これから少し照明暗くしますから、もし本が読みにくければ違う席ご用意します」
もしかして誕生日サプライズか?と思ったが、照明が暗くなった後クリスマスソングが流れるだけで特に何もなく。もしかするとイチャラブカップルの要望だったのかもしれない。
そんなわけで2時間くらいいた後、店を後にした。来店記念にシールを一枚。
ちなみに電気ブランの他にジェムソンとピクルスも注文した。
ピクルスはもっと塩っ辛くてきゅうりが沢山あるほうが好みだ。
6月にニュースを見て以来、ずっと来たい来たいと思いながらこれなかったお店なだけにブログを書くくらい印象的な出来事である。
今度は昼に一回カフェの姿としての森の図書室を見に行くのと、友人と一緒に飲みに行くの二回を計画している。
ただ、あんまり大人数でガヤガヤ騒ぎに行くような場所ではないと感じた。
飲める場所としては人選に気を遣う場所。